雪の練習物語

雪の練習物語

舞台/2021年

私はここまでお芝居について学んできて、卒業してもお芝居を続けていきたいと思っていた。だが、卒制での出演はなし。 (出演予定だったものが選考会で落選したり、俳優コースではない外部へ出演オファーをする組などが多数)  
私が、3年間やってきたことは何だったのか。4 年間の学びの集大成として「映画に出演し、お芝居をする」という明確な気持ちや目標が、全て白紙になった。考えても考えても、やはりその気持ちは捨てられず、先生方に私の気持ちを伝え、話し合いの末、卒業制作として「お芝居の向上のためになることをする」という結論に至った。

恋愛の2人芝居(『両片思い喰らい』舞台形式、観客あり)と、1人芝居(『雪の練習物語』カメラ1台フィックスのみ、観客なし)といった全く違った2つの作品を私なりに試行錯誤を重ね挑んだ。


あらすじ

稽古場で芝居の練習をしている途中に居眠りをしてしまっているめぐみ。 窓の外からめぐみを呼ぶ3人の声。目が覚め芝居の練習を再開する。 しばらくすると、ドアの向こうから1人の男がめぐみを呼ぶ。


STAFF

      出演 : 雪乃
      脚本 : 鈴木 卓爾
演出・録音・編集 : 奥 雄翔
       撮影 : 井上 悠大
       照明 : 奥芝 飛龍
special thank you : 鈴木 歓 鈴木 卓爾 木田 紀生


CAST

雪乃

Yukino

(めぐみ)
(3人の声)
(1人の男の声)

2000年1月27日生まれ 大阪府出身

私が生まれる少し前、天王寺動物園で生まれたユキスケという真っ白で美しいシロクマを見ていた両親。時が流れ、私の生まれた日は大阪では珍しく朝から雪が降っていた。看護師さんも驚くほど肌が白く産まれてきた私は「雪のように清らかで、美しい子に育ってほしい」と雪乃という名前を貰った。
幼い頃に國村隼さんのお芝居を見て俳優を志し、大学入学後からお芝居を始める。

作品へのメッセージ

まず、このシナリオを読んだ時、私の持っている力では、すぐに理解するのが難しかった。なぜなら、1 人の人格だけの語りではなく、途中で、語り手が変わり、交互に現れるというシナリオであったからだった。いつもは相手役がいる。その芝居に反応することで曲がりなりにも自分の芝居は成立していた。だが、1 人芝居は違う。その空間には自分1人しかいない。会話のキャッチボールもできない。その場の空気感も自分1人で作り出さなくてはならないのだ。稽古を始めてみて、自分の芝居がいかに受け身だったかと痛感した。その壁を乗り越えるために、基本に立ち返ろうと全体を通して、何度も台本を読み返した。次に声に出して読み、徐々に動きをつけてい く。その様子を動画に収め、改善点を探る。この作業を反復しておこなった。この作品では演出家として 3 回生の奥雄翔に協力を依頼し、稽古に取り掛かった。

演出家といっても彼は「こういうお芝居をして欲しい」という明確な指示は出さなかった。 「今の動きの意味は?」「なぜその間を取ったのか?」という問いを私に投げかけた。「こういう風に見えた。あるいは感じた」とあくまでも、私に主体性を持たせ、自ら考えたことや、思うことをぶつけ合い芝居見せをする、そんな時間を作った。そうしたことにより、様々な方向から役を見られるようになった。全体として、1 つ 1 つのセリフに対しても、細かく意味を考えて実践するようになっていった。

そして本番当日。芝居の練習をしているという設定のため、あまりカメラへ意識は傾けないこと。頭の中で 「ここはこうしなきゃいけない」という役の素直な気持ちや動きではない、無意識に私自身から放たれる使命感のようなものを、できるだけ取り払うこと。今まで作ってきた自分の中にいる役達を徐々に呼び寄せ引き寄せる感覚。以上のことを意識して芝居に集中した。この作品を通して、私自身が納得いく、気持ちいい演技をするというのは、私自身が私だけの自由を求めてしまっていることだと実感した。それは単に私の欲で、役が求めていることではないため、どうやっても良い芝居にならない。そうではなく、私を介して役が自由になっていく。そうすることで、無意識のうちに私自身も自由になっていく。「今の時間は何だったのだろう」、雪乃としての時間ではない、空白の時間があるような感覚。でも、確かに空間と時間の世界に存在している時、初めて、芝居をしている私がそこに出来上がるのだ。


演出

奥 雄翔

Yuto Oku

2001年3月26日生まれ
鹿児島県生まれ、兵庫県育ち
何も考えずに18年間生きていた。そして気が付いたら京都で一人暮らしをしていた。

作品へのメッセージ

初めて舞台の演出をさせて貰いました。脚本を何度も読み込みながら未知の演技に対して苦しみながらも真っ直ぐと役作りをして行く雪乃さんの姿は俳優の華やかなではなくとも、美しい姿を見ながら演出ができた事を嬉しく思います。


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